シアヌークビルの隆盛と挫折
カンボジア南部に位置する港湾都市シアヌークビル。近くにはロン島やロンサレム島などの美しい島があり、最近まで欧米人バックパッカー向けとしても有名な静かな海辺の町でしたが、ここ数年で大きくその姿を変えてきています。
シアヌークビルは人口150,000人ほどでしたが、2013年から始まった中国からの投資により、2017年になると中国から120,000人の観光客、そして78,000人の永住者が加わりました。中国の裕福層が価格の高騰を引き起こし、カンボジアの貧困層や中低所得層が追い出される始末。
カンボジア人が経営する中小企業の大半は倒産し、2020年にはシアヌークビルの企業の80～90％は中国人が所有していると言われていました。
静かな海辺の町からギャンブルのメッカへ
中国資本の大量流入により不動産開発やカジノリゾート建設に拍車がかかり、静かな海辺の町からギャンブルのメッカへと変貌。一般的なオンラインカジノプレイヤーからVIPプレイヤーがシアヌークビルに滞在し、現在では「東南アジアの新しいマカオ」とも呼ばれています。
さらに銃、麻薬、マネーロンダリング、人身売買、児童労働、売春など、中国の組織によってシアヌークビルがカンボジアの犯罪の巣窟化してしまいました。
しかし憂慮すべき状況に対処するため、政府は取り締まりを命じます。オンラインカジノの段階的な廃止や、賭博に関連したカンボジア在住の中国人の逮捕や身柄引き渡しが行われました。
結果、全盛期ほどの無法地帯ではなくなったシアヌークビルには、ギャンブル目的の中国人を含む、世界中から多くの観光客が訪れてくるギャンブルのメッカとしての地位を確立しました。
COVID-19のパンデミックによる打撃
2019年末になると新型コロナウイルス「COVID-19」の影響で世界的パンデミックに陥り、シアヌークビルもまた、カジノを含むあらゆるサービスやビジネスが閉鎖されてしまいました。
COVID-19のパンデミックによる打撃は計り知れなく、シアヌークビルに危機的状況が訪れます。
パンデミックでインバウンドの収入が見込めなくなり、シアヌークビルに住む20万人以上の中国人労働者（全体の80～90%）が帰国し、不動産開発やカジノリゾート建設が中断します。
町は瞬く間にゴーストタウン化し、シアヌークビルに残ったカンボジア人の多くは失業、借金や破産という最悪な状況となります。まさにシアヌークビルは逆境を迎えてしまいました。
シアヌークビルの新たな方向性への模索
パンデミック前「中国化」が加速していたシアヌークビルですが、現在は新たな方向性への模索が始まっています。世界銀行の支援により主要幹線道路が整備され、何もなかったotres beachに遊歩道が作られました。
シアヌークビルが新たなリゾートシティとして生まれ変わるため、着々と前を向き進み始めています。
シアヌークビルに多くの人を呼び戻すためには、中国資本により急上昇した住宅価格の急落、そして市場の再建が必要不可欠です。カンボジア政府はこの住宅価格の急落と市場の再建を渇望しています。
今後は日本式おもてなしのサービスを提供するジャパニーズ・リゾートホテルの誘致計画もあり、シアヌークビルの市場再建は、日本企業も一役買ってくれそうです。
税制優遇措置を活用した地元人口の拡大
経済特別区であるシアヌークビルではビザ対応制度と税制優遇措置を活用し、地元人口の拡大を狙っています。シアヌークビルへの投資家に対し、投資許認可やビザ発行、税関手続等などを一括で担当するワンストップ・サービス・オフィスの設置、0%の付加価値税優遇措置を取得できます。
このような海外投資家への優遇はシアヌークビルの市場の再建となり、その結果地元人口の拡大へと繋がります。
シアヌークビルの発展はもちろん、カンボジア全体の経済発展に中国の後ろ盾は必要不可欠です。
そこでカンボジアと中国の関係深化のためフン・セン首相と中国の王外交部長が会談し、両国の団結と友好関係の維持で意見が一致。中国カンボジア運命共同体が構築され、高度の相互信頼と深い友情を確立しました。
未来への展望と課題
建設途中だった施設の再建、インフラ整備、地元人口と雇用の拡大など、シアヌークビルの未来への展望と課題は山積みです。
休業・閉業・建設途中の建物が目立つ中、現在では国内観光客向けの新たな観光スポットとして、幹線道路開通の記念モニュメントがシアヌークビルに建設されました。これこそ「カンボジア人はできる」という意思表示であり、未来への展望と課題実現の架け橋となってくれるでしょう。
シアヌークビルはカンボジア一の栄華と逆境の両方を体験した町です。逆境に負けない復活を期待したいところです。
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