【見逃せない】ギャンブラーの誤謬とは|ポーカーへの影響と回避法
最終更新日: 2021/05/18
ギャンブルと行動心理学は大きく影響しています。私たちの脳は無意識のうちに事実や確率論をゆがめてしまい、感情で決断をしてしまうことがあります。その1つの例として挙げられるのがギャンブラーの誤謬(ごびゅう)と呼ばれるものです。
この記事ではギャンブラーの誤謬について紹介します。また、ポーカーとの関連についても合わせて解説します。
ギャンブラーの誤謬とは?
「ギャンブラーの誤謬」とは、自分の経験や主観によって、確率論に基づいた予測を歪めてしまう心理現象のことを言います。「誤謬」とは過ちのことをいい、主観的な判断によって不合理なことをしてしまうことが誰にでもあります。特にギャンブルでは感情的になりやすく誤った判断をしてしまうことが多いため、ギャンブラーの誤謬と言う言葉が生まれたのです。
また、ギャンブラーの誤謬には2つのタイプがあるとされています。
タイプ1とされるのが、古典的なギャンブラーの誤謬であり「同じ結果が続いたあとに、別の結果が出やすいと予想するもの」を言います。一方でタイプ2は「条件に偏りがあって一定の時間後にはこの偏りを検出できると仮定しているもの」を指します。
独立した事象かどうか
コイン投げの場合は、1回1回が独立しているため、何回コインを投げたとしても確率が変わることがありません。
では、じゃんけんの場合はどうでしょう?じゃんけんの場合、お互いに相手がそれまでに何を出したかを検討して次に出すものを決めることができます。相手が3回連続でパーを出したから、次はさすがに違うものを出すだろうなどじゃんけんでは相手との駆け引きをすることができます。
そのため、それぞれの事象は独立しているといえず、ギャンブラーの誤謬はおきません。
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ギャンブラーの誤謬の例
ここでは、具体的にどのような場面でギャンブラーの誤謬がみられるのかを例を確認していきましょう。
コイン投げの例
例えば、コイン投げをプレイしたとしましょう。そして、10回まで投げて以下のように結果が出たとします。
1回目:表
2回目:裏
3回目:裏
4回目:表
5回目:裏
6回目:表
7回目:表
8回目:表
9回目:表
10回目:表
この時点で表が5回連続で出ているので、多くの人は次のトスで裏がそろそろ出るのはないかと予想するはずです。しかし、表がこれまでに何回連続で出たかにかかわらず、11回目でも表が出る確率と裏が出る確率は50%ずつで変わりません。また、統計論的には多く投げれば投げるほど、表と裏が出る割合は限りなく50%に近付くとされています。これは大数の原則と言われます。
しかし、それまでの結果によって、無意識のうちに11回目は裏が出る確率の方が高いと、事実をゆがめてしまうのです。これがギャンブラーの誤謬と呼ばれるものです。
ルーレットの例
人気のカジノゲームであるルーレットにおいてもギャンブラーの誤謬は起こります。
ルーレットにおいて奇数・偶数、赤・黒に賭けた場合、どちらが出るかと言う確率は共に0(アメリカンルーレットであれば0と00)を除いた約50%となります。
しかし、奇数が連続で出ている場合、または赤が連続で出ている場合、次は違う方が出るのではないかと、と主観的に判断してしまいがちです。ルーレットにおいてもコイン投げと同じようにそれまでの結果が次の結果に影響しません。そのため、過去の結果に基づいて次の結果を主観的に判断してしまうこと出、ギャンブラーの誤謬だといえます。
ルーレットに関しては、過去にギャンブラーの誤謬に関する有名な例があります。1913年8月18日にモンテカルロカジノでのルーレットゲームで、26回連続でボールが黒に入るという出来事がありました。ルーレット盤に何の仕掛けもないとすると、ルーレットで26回連続してボールが同じ色(赤または黒)に入る確率は6660万回に1回であり、これは非常にまれな事象だといえます。
この事象が起こった際、多くの人はギャンブラーの誤謬によって「そろそろ違う結果が出る」と予想し続け、大損をしてしまったとされています。このように確率がかなり低い場合でも、連続して同じ結果が出る可能性もあり、過去の結果に次のゲームの結果が影響することはないのです。
投資の例
投資においてもギャンブラーの誤謬は起こります。投資において株価が何日間も連続で上昇し続けている場合、投資家たちは合理的な裏付けがないとしても、そろそろトレンドが変わるのではないかと予想します。
これはテクニカル分析に基づいている場合もありますが、経験に基づいて「そろそろ」株価が下がるという判断をすることがよくあります。
投資においてはコイン投げのように明確に確率がわかっているわけではないですが、投資においてこのように経験に基づいて判断することもギャンブラーの誤謬に含まれます。主観によって売買をしてしまうことによって、損失が出てしまうこともあるのです。
遡及的ギャンブラーの誤謬
ギャンブラーの誤謬では、ある結果が続いた時に、その後に異なる結果が出ることを予想します。一方で、既知の後続の事象から未知の過去の事象について推論することを遡及的ギャンブラーの誤謬と呼びます。
例えば、コイントスで連続して表が出たのを見たときに、それ以前の見ていないコイントスで裏が出ていただろうと推定することが遡及的ギャンブラーの誤謬の例となります。
ギャンブラーの誤謬の誤謬
ギャンブラーの誤謬に加えて、「ギャンブラーの誤謬の誤謬」というものがあります。これは大数の法則を信じすぎるときに起こる現象であり、客観性を信じすぎてしまった時に、思わぬ方向に動いて、予想が外れてしまいことを言います。
ギャンブラーの誤謬によって経験や主観に左右されるのも問題ですが、あまりに客観的になりすぎるのも問題だということです。
ホットハンドの誤謬
ギャンブラーの誤謬は「ホットハンドの誤謬」に対応するものだと考えることができます。ホットハンドの誤謬とは、バスケットボールにおいて表現されます。
通常ギャンブラーの誤謬では同じ結果が継続して出た際に、その後に異なる結果が出ることを予想してしまいます。一方で、ホットハンドの誤謬では、人は前の事象と同じ結果を予測する傾向があり、結果として、高得点者は得点を上げ続けると信じる、という理論のことを言います。
つまり、コイン投げで5回連続で表が出ているのであれば次も表がでる、と予想するのがホットハンドの誤謬です。
ポーカーにおけるギャンブラーの誤謬
ではポーカーにおいてはどのような場面でギャンブラーの誤謬がみられるのでしょうか?ここではポーカーを例にギャンブラーの誤謬を紹介します。
コミュニティカードにおけるギャンブラーの誤謬
ポーカーにおいてコミュニティカードを推測する際、ギャンブラーの誤謬が働きやすいといえます。例えば、前回のゲームで連続してコミュニティカードにAが出ていた場合、プレイヤーによっては今日はAがよく出るから次のコミュニティカードにもAがあるに違いない、これまで連続でAが出ているから次のゲームではコミュニティカードにAは含まれないだろう、などそれぞれで憶測を立てます。
ポーカーにおいては、コミュニティカードにどのカードが含まれているかによって戦略を練る必要があります。そのため、ギャンブラーの誤謬によってコミュニティカードを主観的に推測してしまうことによって、正確に戦略が練られなくなってしまうことがあります。
プレイヤーのツキ
ポーカーをプレイしているとき、ついているプレイヤー、ついていないプレイヤーがいます。数回ゲームをしていると、どのプレイヤーにツキがあるのかが自然と見えてきます。
確かに、その日によって調子の良しあしがあるのも事実ですが、それによって次のゲームの勝者を予想してしまうのは、ギャンブラーの誤謬だといえます。
例えば、調子のいいプレイヤーが同じテーブルにいた場合、このプレイヤーは今日はついているからレイズはしないしよう、ブラフはやめておこう、などプレイが積極的になってしまうことがあるでしょう。これらはギャンブラーの誤謬による典型的な例だといえます。
また、自分の調子がいい時はそれが次のゲームでも継続すると勘違いしてしまい、つい攻めのアクションを取ってしまうことがあります。
ポーカーにおけるギャンブラーの誤謬 回避法
ギャンブラーの誤謬は研究で証明されている通り、避けることができません。しかし、ポーカーであればコイントスやルーレットのように結果が単純でないため、ギャンブラーの誤謬を場合によってはうまく回避することも可能です。
ここではポーカーでのギャンブラーの誤謬の回避方法を紹介します。
毎回テーブルを変える
ギャンブラーの誤謬では過去の経験や主観に基づいて結果を予想してしまいます。過去の結果に影響を受けないようにするのであれば、ゲームをプレイする度に、テーブルを変えてしまうのがいいでしょう。そうすれば、過去の結果に関係なく、毎回新しい気持ちでゲームに臨むことができるようになります。
ランドカジノではゲームごとにテーブルを変更するということは難しいかもしれませんが、オンラインカジノであれば自由にテーブルを変更することができます。
主観的に判断するのを避ける場合には、毎回テーブルを変えて、同時に思考もリセットするといいでしょう。
論理的思考を鍛える
ポーカーは、運が重要なゲームではなく、対戦プレイヤーとの駆け引きが重要なゲームです。そのため、論理的思考を鍛えて、対戦プレイヤーのアクションや発言、仕草など細かな情報に応じて戦略を練ることで、ギャンブラーの誤謬を避けることができます。
コイントスやルーレットでギャンブラーの誤謬の影響を受けやすい理由は、これらのゲームでは結果を予想するためにヒントがほとんどなく、直感で結果を予想しなければいけないからです。これによりギャンブラーの誤謬が働いてしまうのです。
しかし、ポーカーでは多くのヒントがあり、それらを元にゲームの流れを読んだり、予想したりすることができます。情報をもとにすることで、直感ではなく論理的に判断ができるようになるため、ギャンブラーの誤謬の影響を受けにくくなるといえます。
ギャンブラーの誤謬 克服の仕方
ギャンブラーの誤謬は認知バイアスの1つであり、無意識に脳で判断してしまうため、克服するのが困難であるとされています。これまでギャンブラーの誤謬を克服するための効果的な方法は証明されていません。
1967年、BeachとSwenssonは、図形が描かれたカードの山をよく切って、その中から1枚を引いて被験者に見せ、次に引くカードに描かれた図形を予想するように指示する実験を行いました。
被験者は2つのグループに分けられました。1つのグループに対しては、あらかじめギャンブラーの誤謬の存在とその性質について伝え、それまでのカードの順番に依存せずに予想するように指示をしました。
一方で2つ目のグループにはギャンブラーの誤謬に関する情報は一切与えませんでした。
このように2つのグループに対して違う条件を与えたわけですが、実際に結果では2つのグループの応答スタイルは類似しており、どちらのグループの被験者も、同じ図形が連続して出た長さに基づいて予想をするという結果になりました。
この研究によって、ギャンブラーの誤謬の存在について事前に知らせていたとしてもその影響を避けることが不可能なことが証明されています。
そのため、ポーカーなどのカジノゲームにおいても、ギャンブラーの誤謬の影響を受けないことは難しいとされており、無意識のうちに主観的、かつ経験に基づいて結果を予想してしまうのです。
ギャンブラーの誤謬 感受性
1997年のFischbeinとSchnarchのギャンブラーの誤謬に対する感受性の研究を行いました。この研究では5年生、7年生、9年生、11年生、および数学を教えることに特化した大学生の5つのグループにアンケートを実施しました。
そして、それぞれの年齢の被験者に対して、「コイントスを3回行い、3回とも表が出ました。もう1回コイントスを行った場合、4回目でも表が出る可能性はどうなるでしょうか?」という質問を問いかけました。結果は、「裏が出る可能性よりも小さくなる」と答えた割合が、5年生で35%、7年生で35%、9年生で20%、11年生で10%で、大学生ではこのような回答は誰もしないという結果になりました。
このように年齢に応じてギャンブラーの誤謬の影響の受け方が異なるため、ギャンブラーの誤謬に対する人の感受性は、年齢とともに低下すると結論付けられました。
ギャンブラーの誤謬に関しては事前に知識があったとしても、無意識のうちに影響を受けてしまいます。そのため、ギャンブラーの誤謬には克服法がないとされています。しかし、年齢が上がるにつれてその感受性が弱くなるので、年齢があがればあがるほどギャンブラーの誤謬を克服することができます。
ギャンブラーの誤謬に気を付けよう
ギャンブラーの誤謬は無意識に私たちに脳に作用してしまうため、頭では理解していてもそれを制御することができません。そのため、ギャンブルにおいてその影響をうけ、好ましくない結果になってしまうこともあるでしょう。
しかし、ポーカーでは直感ではなく、分析力や観察力も求められるため、比較的ギャンブラーの誤謬の影響を受けにくいといえます。これからカジノゲームをプレイする場合は、ギャンブラーの誤謬の存在を念頭に置き、偏った判断をしてしまわないよう意識してみるのもいいでしょう。