ハロー効果とは|スポーツベッティングにおける危険性

監修者

1990年12月生まれ。新卒で遊技機メーカーの企画職に従事した後、ワーキングホリデーで渡英。イギリスでスポーツベッティングに目覚め、大手ブックメーカーに5年勤務。ギャンブル関連企業での経験や知見を活かし2019年から現職。

ライター

アスリートとしての経験を軸に、スポーツライターとしてのキャリアを確立。競技者ならではの視点から、スポーツの戦術や戦略を深く掘り下げ、ベッティングに役立つ情報を発信している。現在は複数のメディアでライターとして活動中。

 ハロー効果とスポーツべッティング

スポーツべッティングプレイヤーなら、誰しも「予想が外れた」「思ったほどのパフォーマンスが見られなかった」と思った経験があるでしょう。

広くリサーチをして幾度と回数を重ねても、思うような結果にならない時はたくさんあります。

ですが、思わしくない結果が出たとき、「なぜ予想が外れたのか」についてじっくりと考えたことはありますか。

じつは結果を予想する際に、気づかないところである力が働いているケースが」考えられます。

それこそが「ハロー効果」です。ハロー効果は、スポーツべッティングで絶大な効果を発揮し、負けのリスクを増大させます。

スポーツべッティングに一度でも挑戦するなら、ハロー効果について理解しておいて損はありません。

ハロー効果を理解し、上手に付き合うことは、スポーツべッティングにおいて重要なカギの一つです。

本記事ではハロー効果の正体と、スポーツべッティングプレイヤーに向けた実践的なアドバイスをまとめます。

ハロー効果とは

ハロー効果とは、ある物事を評価する際、「その対象の持つ無関係な特徴に着目」してしまい、「それに影響を受けた評価」を下す現象のことを言います。

ハロー効果が働くと、人の見た目や物事の特徴に影響され、本来それとは無関係なところで、誤った評価を下してしまいます。

つまりハロー効果は、客観的で正しい評価を妨げる効果があるのです。

この効果が働いてしまうと、正しい評価ができなくなってしまうので、「良」を「悪」と評価してしまい、「悪」を「良」と評価してしまうのです。

日常の様々な面においてハロー効果はその力を発揮し、それにより人々はあらゆる歪んだ評価を下してしまいます。

良いものに対して悪い評価を下してしまう効果をネガティブ・ハロー効果、悪いものに対して良い評価を下してしまう効果をポジティブ・ハロー効果といいます。

ハロー効果の起源と歴史

「ハロー効果」という言葉が最初に使われたのは1920年で、その言葉と概念はアメリカの心理学者であったEdward L. Thorndike氏が提唱しました。

Thorndike氏は、「人に対する評価は、それとは本来無関係である見た目に影響される」という仮説を立て、とある軍隊のグループを観察しました。

その観察では、軍のグループを監督することになった准士官に対し、初対面の軍のメンバーらを評価するように指示しました。

この結果、准士官らは軍のメンバーの中で身長の高いメンバーや肩幅の広いメンバーを高く評価したのです。

彼らは身体的特徴が優れていると感じたメンバーに対し、「リーダーシップ」や「知性」の面でも優れていると評価しました。

これによりThorndike氏は、無関係な特徴に評価が影響されるとし、その効果を「ハロー効果」と名付けたのです。

「ハロー」とは英語で、天使の頭上に浮かんでいる光の輪のことを言います。

主にキリスト教美術などにおいて神仏や聖人の体から発せられる光明を視覚的に表現したものですが、仏教美術においても、仏像などの背面に似たような物が見られます。

つまり、何かが神聖であったり優れていたりする場合にのみ見える輝きのようなものなのです。

無関係な特徴から影響されて、評価対象に「ハロー(Halo)」が見えるような現象に陥ってしまうことから、「ハロー効果」という名前が生まれたと考えられています。

ハロー効果が起こるのはどんな時?

この「ハロー効果」という言葉を初めて聞いたという人も多いかもしれませんが、実は日常のあらゆる場面に潜んでいます。

では、どういった要因でハロー効果が働くのでしょうか。以下でいくつかの例を紹介します。

要因1:人の外見

ハロー効果は第一印象などの特徴が評価に影響する効果なので、人の見た目には多いにその力を発揮します。

例えば、ある女性の目の前に、スーツを着てネクタイを締め、髪をきれいに整えた男性が現れたとしましょう。

その女性が男性の身なりに影響を受け、「彼はしっかりした性格の人だろう」という評価を下すなら、それはハロー効果が働いていると言えます。

なぜなら、スーツを着てネクタイを締めていることと、その人が「しっかりした性格」であることは、本来無関係であるからです。

ハロー効果 スーツ姿

一方で、パジャマのような服装で身だしなみの出来ていない男性が現れたとき、「彼はだらしのない性格の人だろう」という評価を下した場合も、それはハロー効果によるものと言えるでしょう。

要因2:人の肩書きや学歴

人の見た目をきっかけにして働き易いハロー効果ですが、人の肩書きや学歴によってもその力を発揮します。

2011年にオーストラリアのニューサウスウェールズ大学が発表した研究では、人の肩書きによってハロー効果が起こることが証明されています。

この研究で実施された実験では、大学生グループに、「最高位の教授」という肩書の人物と、「ゲスト講師」という肩書の人物とそれぞれ会う機会を作りました。

その後、学生グループにその二名を評価するよう指示した結果、学生のほとんどが「最高位の教授」の方をより高く評価しました。

また、これは肩書きではなく見た目の例ですが、「最高位の教授」の方が背が高かったことも分かっています。

ハロー効果 ビジネスシーン

さらに、企業組織などにおいて、良い大学を卒業した人を「仕事ができる」と評価される現象も、ハロー効果によるものと言えるでしょう。

有名大学を卒業した人は、そうでない人に比べて仕事ができる傾向にあるのは事実かもしれませんが、それはあくまで傾向です。

「有名大学を卒業したこと」と「仕事ができること」は本来、直接の関係はありません。

実際の成績とは無関係に、有名大学を卒業している人が「仕事ができる」と評価された場合は、そこにハロー効果が働いたと言えるでしょう。

要因3:周りからの評価

上記では人の外見や肩書き、学歴などにより起こるハロー効果について解説しました。

一方で、その対象が人ではなく物や商品の場合でも、ハロー効果は働くのです。

例えば有名な女優がある商品をすすめていた場合、その商品を自ら使用する前に「優れている」と評価するなら、それはハロー効果が働いていると言えるでしょう。

本来、「優れている」と評価するのは自分であり、女優の下す評価とは無関係ですが、有名女優がすすめていたために評価が影響されてしまうのです。

また、「みんなが評価しているから」という理由で何かを過大評価することも同じです。

ハロー効果 広告

要因4:広告

実は、我々が日常的に目にしている広告の数々もハロー効果の働く要因になり得ます。

2019年にはベルギーにて興味深い研究が発表されました。ヨーグルト、ポテトチップス、ジュースなどの商品に、それぞれ「オーガニック」と「オーガニックでない」というラベルを張り付けて被験者に試食させたところ、被験者のほとんどが「オーガニック」の商品の方の味を評価しました。

しかし本当のところ、「オーガニック」と表示されたものも「オーガニックでない」と表示されたものも、全く同じものだったのです。

このことからも分かるように、商品ラベルや広告などはハロー効果を働かせる大きなきっかけになり得ます。

現に多くの企業のマーケティング戦略では、消費者のハロー効果を誘発するための様々な工夫がなされています。

要因5:印象に残っている記憶

ハロー効果が力を発揮する要因は、上記のような第一印象だけではありません。

実は、記憶で一番印象に残っている事柄から起因して、ハロー効果が働く場合もあるのです。

例えば、ある政治家に政治資金流用の疑惑が持ち上がったとしましょう。

その後潔白が証明されたとしても、その政治家に疑惑の印象がついて回れば、彼に対する世間の評価は降下するでしょう。

本来であれば、潔白が証明されたので、評価が落ちる要因は無いはずです。

しかし、人々の記憶に資金流用の記憶が一番大きく残ってしまうと、こうした現象が起こるのです。

これはよく見る現象ですが、立派なハロー効果による現象と言えるでしょう。

要因6:親近感

上記まではハロー効果の要因として比較的理解しやすい項目でしたが、なんと「親近感」の有無によりハロー効果が働くことが分かっています。

1973年に心理論文として発表された研究では、160名の教師を対象に、多数の小学生生徒の書いた小論文に点数をつける実験を実施しました。

その結果、一般的によく使われている氏名を持つ生徒の書いた小論文には高得点をつけ、一般的に珍しいとされる氏名を持つ生徒の小論文にはより低い点数をつけたことが分かりました。

つまり、親近感を感じる氏名を持つ生徒の小論文の方が、良い印象を持って評価されたのです。

これは「親近感」が「好印象」に繋がり、ハロー効果が働くという証明になりました。

スポーツべッティングでハロー効果は危険!?

ハロー効果の正体については上記でご理解頂けたでしょう。では、スポーツべッティングにどのように関係してくるのでしょうか。

ハロー効果が「対象を正しく評価できなくなってしまう」現象であることはいくつか例をあげてご紹介しました。

では、その例の対象となるものを、スポーツチームや選手に置き換えてみて下さい。

チームや選手のそれまでの成績や、印象に残っているパフォーマンスに引きずられ、正確な評価ができなくなってしまう現象は容易に想像つくでしょう。

サッカーブラジル代表から見るハロー効果

ネイマール

サッカーブラジル代表と聞くと、ペレ、ロベルト・カルロス、ロナウド、ロナウジーニョ、最近で言うとネイマール、また日本人であれば、かつて日本代表の監督を務めたジーコを思い浮かべるでしょう。

数々のスター選手が目立つサッカーブラジル代表の功績は、世界トップレベルであるというのが一般的な印象ではないでしょうか。

現に、ブラジルはFIFAワールドカップ大会の歴史で最多優勝を果たしています。

しかし、実際の成績をもう少し詳しく見てみましょう。「ブラジル=ワールドカップ優勝の常連国」と思われがちですが、実は最後に優勝したのは2002年。

これは実に約18年も前のことなのです。しかも驚くことに、それより後の2006年、2010年、2014年、2018年のワールドカップでは、ブラジルはいずれも決勝戦に進んでいません。

それでもなお、万人の記憶に焼き付いている過去のスター選手の数々や、功績の強い印象により、ブラジルは未だに「サッカー最強国」と評価されているのです。

特に日本人であれば、2002年のワールドカップが日韓共催であったことから、同大会のブラジルの優勝は鮮明に覚えているでしょう。

このような記憶や印象から、まさにブラジル代表に“Halo(ハロー)”が見えてしまい、評価が歪んでしまうのです。

つまり、スポーツべッティングにおいてハロー効果に気づかずに賭けてしまうと、大変危険なことになるのです。

ハロー効果に囚われないためには

スポーツべッティングでリスクを抑えるためには、ハロー効果にとらわれないようにするのではなく、ハロー効果の存在を理解することが大切です。

ベットをする前に、上記に挙げた四つの要因を思い出してみましょう。

チームや選手の「見た目」「肩書き(学歴)」「広告」「親近感」などに惑わされていないか、確認しましょう。

また、自分の選択したチームや選手が負けるかもしれない理由を最低三つ探してみましょう。客観的な理由を考えてみると良いでしょう。

ハロー効果は自然に働くものであり、それを阻止することはほぼ不可能でしょう。

例えハロー効果の知識を持っていたとしても、それは無意識のうちに起こります。重要なのは、ハロー効果に影響されて歪んだ評価を下しそうになった時、そこに見えている“Halo(ハロー)”に気づき、それを意識的に取り除くことです。

「サッカーブラジル代表は強い」と考えベットを置く時、「本当に強いのか、データを見てみよう」という動作を入れることで、スポーツべッティングに起こるハロー効果を減らすことができるでしょう。

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