The Green Lumber Fallacyとスポーツベッティング

The Green Lumber Fallacyって何?

the Green Lumber Fallacyは、2012年にNassim Taleb(ナシム・ニコラス・タレブ)の著書「Antifragile」によって紹介されました。the Green Lumber Fallacyとは、大して重要ではない事実を重要だと勘違いしてしまう人間の傾向のことを指し、これは意思決定において大きな影響を及ぼします。そして、the Green Lumber Fallacyから派生した言葉に、Green Lumber Problemがあります。これは、私たちが問題解決をしようとした時や将来の予想を立てるときに不適切な事実に焦点を当ててしまっているときのことを指します。

スポーツベッティングも未来を予想するものの1つです。そのため、Nassim Talebが提唱したGreen Lumber Problemとスポーツベッティングには関連があるのです。

この記事ではGreen Lumber Problemとは何なのか、それをスポーツベッティングにおいてどのように生かすことができるのかについて解説します。

Nassim Taleb(ナシム・ニコラス・タレブ)とは?

nassim taleb

ナシム・ニコラス・タレブは、金融デリバティブの専門家であり、数理ファイナンスの実践者としても知られています。ニューヨークのウォール街でデリバティブトレーダーとして長年働いたあと、認識論の研究者となり、複数の書籍を出版してきました。その中でも2冊目に出版されたThe Black Swan(ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質)は、150万部を突破した大ヒット作品となりました。この本の中では、「自分で思っているほど実際には物事をよくわかっていない」という人間の本質について書かれています。

the Green Lumber Problemはどのように誕生したのか?

「the Green Lumber Problem」という言葉は、世界一の製材業者であるJoe Siegelの逸話から誕生しました。Talebはこの「the Green Lumber Problem」というアイディアをJim Paulのよる「What I Learned Losing A Million Dollars」を読むことで得ました。

Joe SiegelはPaulが知っている製材業者の中で最も多くの木材株と先物取引をして、大きな成功を収めている人物でした。しかしある日、SiegelはPaulに対し、「緑に塗られた木材” the Green Lumber”がなぜあんなによく売れたのかが理解できない」というように話しました。

Paulは驚き、Siegelが冗談を言っているのだと思いました。というのも、”the Green Lumber”とは、緑に塗られた木材のことを意味しているわけではなりません。”the Green Lumber”とは、乾燥していない切りたて木材のことを指すのです。”the Green Lumber”は新鮮な木材であるため、市場で高い価格が付けられるのは当然のことです。しかし、Siegelは”the Green Lumber”を緑に塗られた木材だと理解していたので、なぜ高く売れたのかが理解できなかったのです。

Siegelはこの”the Green Lumber”の意味すら理解していなかったのにどうして、世界一の製材業者となることができたのでしょうか。

このことからPaulが学んだことは、Siegelは注文フロー、価格行動、その他のトレーダーの手法など短期的な情報に基づいて取引をして成功していたということです。Siegelはこれらの情報のみに基づいて意思決定をしており、それが成功につながったのです。そして、Siegelは長期的な情報や”the Green Lumber”が何を意味するかなど、その他の情報にはそこまで関心がありませんでした。

つまり、Siegelにとってはファンダメンタル分析は必要ではなかったのです。彼にとってはいま目の前で起こっている情報のみが重要であり、ただそれらに基づいて取引をすることが成功のカギだったのです。

そこでNassim TalebはSiegelがなぜそこまで成功を収めることができたのか、ということに注目し、Siegelの戦略について仮説を立てました。この「the Green Lumber Problem」で重要なことは、本当に私たちが知っておくべきことは、目の前にあるものだということです。しかし、人々はたいして重要ではないことばかりに目を向けてしまうため、本当に大事なことを見逃してしまうのです。これによって成功を逃してしまうのです。

スイスの場所を知らなかったスイスフラントレーダー

Talebはアイビーリーグの出身で、金融ボラティリティの専門家として教育を受けました。仕事の場ではTalebは為替相場について学び、FXによって利益を得ていました。

彼がFXトレーダーとして働いている際、Talebは、当時世界で最も大きな成功を収めていたスイスフランのトレーダーである男性に会いました。彼は1980年代の金融恐慌の前に、何百万ドルもスイスフランに賭けていました。

しかし、このトレーダーはスイスに行ったことがありませんでした。そして、当然のことながら、スイスの歴史や経済、政治についても何の知識も持っていませんでした。さらには、地図上でスイスの位置を指し示すことすらできなかったのです。しかし、スイスフランを利用して、大儲けすることができたのです。

そこでTalebはこのトレーダーの成功の秘訣は、基本的な取引戦略とリスクヘッジだと考えました。つまり、「the Green Lumber Problem」と同じように、基本的かつ最も重要な情報だけに着眼し成功を収めたのです。

The Green Lumber Problemとスポーツベッティングでの成功

ここまで「The Green Lumber Problem」とは何なのかを解説してきました。ではこの「The Green Lumber Problem」はスポーツベッティングとはどのように関係しているのでしょうか?

ベッターは1つの大会、スポーツに的を絞るべきではない

最初にいえることは、「ベッターは1つの大会、スポーツに的を絞るべきではない」ということです。

ベッターの中には彼らの好きなスポーツに自由に賭けをしつつ、成功している人がたくさんいます。つまり、最高のベッターは複数の大会やスポーツに賭けることで多くの賞金を稼いでいるのです。アジアの競馬やスイスのアイスホッケー、アメリカのバスケットボールなどもちろんスポーツの種類もバラバラです。

一方で、引退したプロのスポーツ選手が、スポーツベッティングに対してアドバイスをしていることもあります。これはプロの選手であればそのスポーツに関する深い知識があるため、スポーツベッティングにおいても有利だと考えることができるからです。

しかし、実際にスポーツをプレイすることと、スポーツベッティングが全くの別物であることを理解しなければいけません。

元プロのスポーツ選手だとしても、スポーツベッティングのプロのように試合の結果を予想することができません。スポーツベッティングで成功しているプロのベッターは元プロ選手のようにそのスポーツについて詳しい知識を持っているというわけではありません。しかし、賭けで勝つのに必要な洞察力を持っているのです。つまり、Siegelやスイスフラントレーダーのように成功するために、必要な情報のみを得ているのです。

プロのベッターが注目していることは?

スポーツベッティングで成功しているプロのベッターは、確率、ランダム性、戦略などについてよく理解しています。また、彼らは意思決定に影響を及ばす認知バイアスについても知識を持っています。これらの多くはスポーツとは関係ないことばかりですが、これらの知識を持っているかによってスポーツベッティングの勝敗がわかれます。

プロのスポーツ選手はスポーツに関する知識は豊富ですが、このような実際のベッテイングに必要な知識を欠いているため、スポーツベッティングでは勝つことができないのです。

プロのベッターはベットをする際に、チームの勝敗や合計スコアの原因など壮大な理論を気にかけていません。そのことによって、まれに馬鹿にされることもありますが、プロのベッターはそれらの知識が重要でないことを知っているのです。そして、多くの人が不必要だと考えている本当に重要な情報をしっかりとおさえているのです。

これがすでに紹介したTalebの「the Green Lumber Problem」と大きく関係しています。スポーツベッティングにおいて成功を収めることができるのは、the Green Lumberが何かを理解しているベッターではなりません。スポーツベッティングで成功できるのは、リスクや確率、基本的な戦略をよく理解しているベッターなのです。

そのため、1つのスポーツについて徹底的に学んで、そのスポーツだけに賭けた方がいい、というは誤りなのです。確率やリスクについてよく知っておけば、大会やスポーツの種類に関係なく、スポーツベッティングで勝つことができるのです。

スポーツベッティングにおける確率

スポーツベッティングをする際に見逃してはいけないのが確率です。これを基にベットをすることで、スポーツベッティングにおける勝率を上げることができます。

この確率は、ブックメーカーが提示しているオッズを利用して計算することができます。しかし、計算式は複雑であるため、数学が苦手な人にとっては面倒に感じられるでしょう。

インターネットで「確率 スポーツベッティング」と検索すると、確率を算出するためにツールを提供するサイトがいくつかヒットします。これらのツールではオッズを入力するだけで、すぐに確率を%で示してくれます。これらの確率に基づいてベットするのがスポーツベッティングで稼ぐために1つのポイントです。

期待値の計算

スポーツベッティングにとおいて確率と同じくらい重要なものとされているのが期待値です。期待値とは同一のオッズで何度も何度もベットした場合の、プレイヤーが獲得する、または失うと考えられる金額のことを指します。

例えば、コイン投げをして表に10ドルを賭けたとします。この賭けに勝って11ドルを獲得した場合、このゲームにおける期待値は0.5となります。

つまり、このコイン投げを何度もプレイした場合、1回10ドルのベットで、平均して0.5ドルが獲得できるということになります。これが期待値の基本的な考え方です。

この期待値は以下の計算式で簡単に算出することができます。

(勝つ確率) x (1ベットあたりの獲得可能金額) – (負ける確率) x (1ベットあたりの損失金額)

上記のコイン投げの例では、

50%x11ドル-50%x10ドル=0.5となります。

スポーツベッティングで期待値を計算するには、ツールを使用して算出した確率を使用するのもいいですが、デシマルオッズを上記の計算式に代入することで計算することができます。

その際、まずは賭け金にデシマルオッズをかけて、次に賭け金を引いて、各結果の獲得可能な賞金を計算します。この結果をオッズで割って、その結果を確率として計算式に代入します。

このようにして期待値を計算することができます。期待値がプラスであるときは、1回ベットするごとにその金額が利益として獲得できることを意味します。一方で期待値がマイナスの時は、賭けをするときに期待値の金額を毎回損することを意味します。

この期待値を求めてからベットをすることによって、どのオッズにいくら賭けるのがいいのか、と言うのが把握できるようになります。

スポーツに関する知識は必要ない?

ここまでの解説ではスポーツベッティングに勝つためには、スポーツに関する知識はそこまで重要ではない、という結論になります。

しかし、ここで主張したいことは、スポーツに関する知識が”一番”重要なことでない、ということです。もちろんスポーツベッティングにおいてスポーツについてある程度知っていることで、結果が予想しやすくなることもあるでしょう。しかし、スポーツベッティングにおいて一番重要なことは、確率やリスクについて考えることです。このことを忘れて、スポーツについて学ぶことばかりに夢中になってはいけないということをお伝えしたいのです。

スポーツベッティングで勝つにはスポーツについて分析することが重要である、ということは多くのウェブサイトが解説していますが、これだけではないとうことを忘れないでください。スポーツベッティングはギャンブルであるため、最も基本である確率、リスクについて学ぶことが当然のことながら一番重要なのです。