皆さんは「確証バイアス」という言葉を耳にしたことがありますか?これは、スポーツベッティングのベッターがよくしがちな失敗を表すときに使用される言葉です。
スポーツベッティングをしていると、一度ベットをした後に、ベットした結果と反対の結果になる可能性が高いという情報を得ることがあります。そんな時、予想が外れる可能性が高いとわかっていても、ベットの内容を変えなかったことはありませんか?もしそうならば、あなたはすでに確証バイアスの犠牲者だといえます。
この記事では確証バイアスとスポーツベッティングの関連について紹介します。この記事で確証バイアスについて学び、ベットの仕方を見直してみましょう。
確証バイアスとは?
「確証バイアス」とはとても簡単です。人間は物事を吟味して情報を集めているときに、無意識に自分の考えを肯定するような情報ばかりを収集します。一方で、自分の考えと反対の情報は無視したり、軽視したりする傾向があります。
つまり、情報を収集するときに、無意識に情報を差別化してしまっているのです。これが確証バイアスと呼ばれるものです。これは人間であれば誰でも持っている傾きであり、無意識にしてしまっているのです。
この確証バイアスによって自分の都合のいい情報ばかりを集め、本当に重要な情報を逃してしまうことがあります。これによって視野が狭くなり、柔軟にものを考えることができることができなくなってしまうのです。
スポーツベッティングにおいてこの確証バイアスは悪影響を及ぼし、これによって正しく結果が予想できなくなってしまいます。
例えば、チームAとチームBが試合をするとして、チームAの勝利にベットしたとしましょう。そして、ベットした後に情報収集をしていると、自然とチームAに有利な情報を集めてしまうのです。チームBに有利な情報があったとしてもそれを無視してしまうなど、情報収集において大きな偏りが出てしまうのです。そのため、チームBの方が勝率が高いという信憑性の高い情報があったとしても、それを無視してベットの内容を変更することをしないのです。
これによって最終的に賭けに負けてしまうことになります。自分が信じていること、知っていることに対して固執してしまうのは人間の本質です。しかし、これがスポーツベッティングにおいては大きな弱点となるのです。
22ベット
確証バイアスの例
確証バイアスというととても専門的な用語に聞こえるため、自分の日常生活とはそこまで関連がないと考えてしまうでしょう。しかし、確証バイアスとは私たちが無意識のうちに持っている偏見のことであり、日常の様々な場面の意志決定に大きな影響を与えています。
ここでは確証バイアスの身近な例を紹介します。
例1.オンラインショッピング
オンラインショッピングをして、欲しいなと思う商品があったとします。オンラインで購入する際は、その商品についての評判や口コミを事前にチェックしますよね?
その時私たちは、その商品がいいものであることを確証するために、ポジティブな内容のレビューばかりを探してしまう傾向があります。そして、マイナス評価を軽視してしまうのです。
これによってレビューや評価を確認したかしないかに関わらず、最終的に商品を購入する、という選択をするようになるのです。
あなたがスポーツベッティングをするためにブックメーカーを選ぶ際も、確証バイアスが働いていたのではないのでしょうか?1つ気になるブックメーカーがあった場合、実際に登録する際に、そのブックメーカーのレビューを調べたはずです。その時、無意識のうちにポジティブなレビューばかりを探して、ネガティブな内容は無視していませんでしたか?
確証バイアスによって客観的に情報収集をしていなかったのであれば、もしかしたら正しいブックメーカーを選べていなかったかもしれません。
例2.起業に対する先入観
一般的に起業することは大きなリスクだと考えられています。これは起業するためには大きな資金が必要になったり、人を雇ったりしなければならず、事業がうまくいかなかった場合、借金を抱えてしまう可能性があるからです。これが一般的な人が持つ起業に対するイメージです。
実際は、今はパソコン1台あれば起業ができる時代であり、初期投資やリスクがほとんど0でビジネスが始められるのが現状です。しかし、「起業は危険である」という偏見、つまり確証バイアスが強く働き、「リスクなしで起業できる」という考えがなかなか受け入れられていないのです。
そのため、日本ではまだまだ「大企業が安定している」という考えが根付いているのです。
現在では、終身雇用制度も終わったといわれ、大企業が破綻することも珍しくありません。それでも、多くの人は良い大学に行って、良い企業に勤めるのがベスト、という考えを捨てられずにおり、時代の流れにうまく乗れていないのです。
つまり、確証バイアスによって、時代の変化に柔軟に対応できていないといえます。
例3.投資
確証バイアスの例としてわかりやすいのが「投資」です。例えば投資をして、ある企業の株を購入したとしましょう。この場合、多くの人はその企業に関するいい情報をばかりを集めて、「株価が上昇する」というのを信じようとします。これにより、企業の経営が傾いたり、株価が下がったりしたとしても、「まだ大丈夫」と自分の決断に固執してしまい、損切りをしようとしないのです。
正確な判断をせず、損がどんどん膨れ上がっていき、結果的に大損してしまうのです。投資で大損するパターンには確証バイアスがかかわっていることが多く、一度投資したら利益が出るまで売却しないという人が非常にたくさんいるのです。
確証バイアスに関する実験
認知心理学者であるペーター・カスカート・ウェイソン(Peter Cathcart Wason)は、確証バイアスの存在を示すために、多くの実験を行いました。
2-4-6課題
「2-4-6課題」はウェイソンが1960年に行った実験です。
まず、被験者に「数列は、あるルールに基づいて3個の数字が並んでいる」と伝え、「2, 4, 6」という、3個の数字からなる数列を提示します。そして、被験者にこの数列のルールを見つけるように言います。
被験者が自分で作成した数列を実験者に提示すると、実験者はその数列がルールに当てはまる場合は「ルールを満たす」、あてはまらない場合は「ルールを満たさない」を返答するとします。被験者は何度でも数列を提示することができ、ルールがわかった場合、実験者にどんなルールを推定したかを伝えます。
2-4-6課題でウェイソンが被験者に与えた数列のルールは「増加する3個の数字」というものでした。
一般的に被験者は以下の手順で、ルールを推定します。
- ルールを推測する。この時に推測した最初のルールを、ルールAとする
- ルールAを満たす数列・ルールAを満たさない数列をいくつか提示する
- ルールAが正しいかどうかを判定する
- ルールAが正しいと思われれば実験者に告げる/ルールAが正しくないと思われれば別のルールBを考える
- 必要なだけ1~4を繰り返す
この時、被験者の回答には「8,10,12」「10,12,14」「20,22,24」「42,44,46」「96,98,100」が多く、これらに対するウェイソンの回答はすべて「ルールを満たす」だったことから、 「2ずつ増加する」というように、ルールを満たす例だけを調べてルールを推定したケースがみられました。また、「偶数列である」という回答も多く見られました。
しかし、実際にウェイソンが与えたルールは「増加する3個の数字」というルールであり、「2ずつ増加する」というルールは誤りとなります。
このように誤ったルールを推測した原因は、実験者であるウェイソンが偶数列、2つずつ増加する数列を提示したことにあります。そのため、最初の「2, 4, 6」という数字を提示した時に、多くの被験者は「偶数列だろう」「2つずつ増加する数列だろう」という仮説を立てたのです。そして、これらの仮説を実証するために自分の仮説を支持する「8,10,12」「10,12,14」などの数列を提示してしまい、誤った仮説への確信を深めてしまったのです。
被験者は自分の仮説に一致する数列ばかりではなく、「8,9,12」「2,12,14」など仮説に反する数列を提示することもできました、これらを提示していたのであれば、「偶数列である」 「2ずつ増加する」という仮説が成立しなくなるので、他の仮説を立てることができたはずです。しかし、自分が最初に立てた仮説を信じたい、という確証バイアスが働いたため、提示する数列に偏りが生じてしまったのです。
ウェイソン選択課題
ウェイソンは2-4-6課題の他に、1966年に選択課題も行っています。この実験で被験者は、4枚のカードを使用した問題を解くように指示されます。
目の前に4枚のカードがあり、それぞれ片面にアルファベット、もう片面に数字が書かれているとします。
そして、テーブルに置かれた4枚のカードに、A,K,4,7と書かれているとします。この時、「片面が母音ならば、そのカードのもう一方の面は偶数でなければならない」というルールが成立しているかどうかを調べます。このルールが成立するかを調べるために、どのカードをめくるべきなのか、と言うのがウェイソンの課題です。
この時の正解は、「A」と「7」のカードをめくることです。これは、「カードの片面に母音が書かれているのならば、別の面には偶数が書かれている」ことを確かめるためには、「母音の裏には偶数が書かれていること」と「奇数の裏には子音が書かれていること」の2つを調べる必要があるためです。
しかし、実際には「A」と「4」をめくる、という回答が圧倒的に多かったのです。確かにこれらのカードをめくった場合、「片面が母音ならば、そのカードのもう一方の面は偶数でなければならない」というルールを肯定することができます。しかし、奇数の裏に子音が書かれていることが確認されていないため、正解とは言えないのです。
つまり、ここでは「カードの片面に母音が書かれているのならば、別の面には偶数が書かれている」が「真」であることを証明するには、その対偶である「奇数の裏に子音が書かれている」も「真」であることを証明する必要があったのです。
しかし、ここでも確証バイアスが働き、仮説を証明するだけためにカードを選択してめくってしまったのです。そして、待遇に関しては完全に無視してしまい、「7」をめくるという選択を多くの被験者が無視してしまったのです。
つまり、確証バイアスによって自分にとって都合のいい情報ばかりを集めてしまった結果、正解にたどり着くことができなかったのです。
なぜ確証バイアスは起こるのか?
では、なぜこの確証バイアスが起こるのでしょうか?その理由はとてもシンプルです。
人間は誰でも自分が正しいと思いたいからです。人間は自分の考えや決断を否定されるのを嫌います。そのため、他人から反対意見をもらったりすると、その意見を実際に吟味する前に反対意見を言ってしまったり、いらいらしてしまったりします。それほど人間は否定されるのを嫌うのです。
これにより自分のことを肯定して、他の意見や考え方を遮断してしまうのです。
確証バイアスを防ぐ方法は?
スポーツベッティングにおいて確証バイアスの影響を受けないようにするには、客観的かつ論理的に物事を考えることが必要です。つまり、決断をするときに自分の感情を交えて考えてはいけないのです。
例えば、マンデーナイトフットボールでNFLのニューイングランド・ペイトリオッツとニューヨーク・ジェッツと試合が開催されるとします。そして、あなたはニューイングランド・ペイトリオッツの勝利に賭けようとしているとします。
この時、ニューヨーク・ジェッツに賭けた方がいい理由、多くの人がなぜニューヨーク・ジェッツに賭けているのか、をよく考えてみましょう。この時、自分とは反対の結果に対する多くの人の意見を知ることで、確証バイアスを打ち破って反対の意見にも耳を傾けることができるようになります。これにより、視野が広くなり、ニューイングランド・ペイトリオッツに有利な情報ばかりを集めなくなります。
このようにスポーツベッティングをするときには、なるべく客観的な視点を持ち、反対のベットをしている人の意見や考えを知るようにしましょう。そうすることで、確証バイアスに左右されず、正しい情報を取捨選択できるようになります。
キャッシュアウト機能の活用
スポーツベッティングにおいては確証バイアスに左右されずに、正しい判断をすることが重要です。
スポーツベッティングではベットをした後も、継続して情報収集を行うようにしましょう。この時に、確証バイアスに影響を受けずに客観的に情報収集をすることが肝心です。自分のベットと反対の結果に対する有利な情報も徹底的に調べるのです。
そうすると、ベットの内容が間違っていたのではないか、という結論に至ることもあるでしょう。その時は、最初の自分の判断とは異なる決断であったとしてもそれに従い、ベットをキャンセルするようにしましょう。
スポーツベッティングでは、ベットをキャンセルするキャッシュアウト機能というものがあります。キャッシュアウト機能では、賭け額の数%を支払うことによって一度確定した賭けをキャンセルすることができるのです。これによって全額損失することを回避することができます。つまり、キャッシュアウト機能とは投資における損切りのようなものです。
確証バイアスが強く働いていると、自分のベットが正しいと信じ込んでしまうため、キャッシュアウト機能を使用する機会は全くと言っていいほどないでしょう。これにより損失額が膨らんでしまうのです。
しかし、確証バイアスを克服してキャッシュアウト機能をうまく使いこなせるようになれば、損失額を最小限にすることが可能になります。
確証バイアスの克服
スポーツベッティングにおいて確証バイアスは大きな障害となります。確証バイアスによって正しく情報収集ができないのであれば、もちろん正しくベットすることができません。
そのため、まずは第一歩として、常に無意識のうちに私たちは偏見を持っているということを認識する必要があります。
そして、スポーツベッティングをする際には、「自分が無意識のうちにどのような情報を偏って集めているのか」「反対意見を見つけた時にどのように反応しているか」などを自分に聞いてみましょう。
自分の偏りを見つけ、自分の意見や考えとは異なる意見にも耳を傾けることが大切です。これによって、客観的な視点をもってスポーツベッティングが楽しめるようになるはずです。